About RESUME~古き良き緻密な世界~ #6
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奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。
当店で行う作業内容などを紹介する~古き良き緻密な世界~
第6回のテーマは「摩耗したパーツの修理方法」についてです。
前回は時計を長持ちさせるためにも、オーバーホールの重要性をお話させていただきました。
時計も車と同様、定期的なメンテナンスを行うことで、安全に快適にお使いいただけます。
しかし、機械である以上、メンテナンスを行わず長期に渡り使用すると、歯車の軸は常に回転を続けているため、摩耗し故障の原因となりやすい箇所です。
今回は摩耗してしまった軸をどのような方法で修理しているのかについてお話します。
画像のパーツは「2番車」と呼ばれ、主に分針を動かす役割を担っています。
画像で見ると軸先は太く見えますが、実際は約1mmの太さしかない繊細なパーツです。
この軸が常に「地板」と接しながら回転し続け分針を動かしています。
もちろん摩耗しにくいよう軸の受けとして人口ルビーの使用や、専用オイルにより摩擦を軽減し軸先を保護しています。
しかし、定期的なメンテナンスを行わずにいるとオイルが揮発してしまいます。
それでも動かし続けると軸が摩耗し、「痩せる」といった現象が発生します。
その画像がこちら
丸で囲った上部が本来の太さですが、下部を見ると摩耗して細くなっているのが分かります。
この状態を「痩せている」と言います。
軸が痩せてしまうと、歯車に傾きが生じ、止まりの原因や時針と分針が接触するといった、不具合の原因となります。
では、どのように摩耗した軸を修正していくのでしょうか。
修理方法は至ってシンプル。
削れた歯車を旋盤に取り付け、旋盤で使用する超硬刃物を使って軸を削り、太い軸を痩せている軸と同じ太さになるまで手作業で削っていきます。
しかし、シンプルとはいえ0,1mmの単位で削っていく技術は簡単ではありません。
職人の経験と刃物から伝わる感覚を頼りに慎重に削っていきます。
もちろん、削り過ぎると軸が折れてしまうため、失敗は許されない実に繊細な作業です。
こうして修正した画像がこちらです。
ご覧の通り、軸の太さが一定になっているのがわかります。
では、これで作業が終わりかというとそうではありません。
次は細くなった軸に合わせて地板の穴のサイズを調整する必要があります。
穴の調整方法は、地板をタガネで叩いて穴を閉めていきます。
地板を叩くことで穴の広さが狭まり、細くなった軸でも安定する上に、金属は叩かれるとより強度が上がる特性があります。
では、叩けば叩くほど良いというわけではなく、叩きすぎると穴が閉じたり、地板が変形する恐れがあるので慎重に加減を見極めながら叩きます。
適度に穴を閉めたら軸修正と同様に刃物で穴を削り、軸の太さに合わせて修正します。
軸と地板の穴が合致して大きなぐらつきがなくなれば、ようやく修理は完了です。
今回ご紹介したケースはOHをしていない時計によく見られる現象で、表面上は調子よく動いていたとしても、機械の中身は悲鳴を上げていることは少なくありません。
時計に不具合が出てから、メンテナンスに出すのではなく、適切なタイミングでOHを受けることで、パーツのダメージを防ぐことはできます。
そのため、大切な時計を安心して長くお使いいただくためにも、当店では3~5年を目安に定期的なOHを受けていただくことをおススメしております。
すべてはお客様に安心してヴィンテージウォッチをお使いいただく為に...
当店にて時計をご購入する際に、気になることやご質問などございましたら、出来る限りのご対応、回答させて頂きますので、いつでもお問合せくださいませ。
それでは、今後とも【RESUME】をよろしくお願い申し上げます。