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奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。
当店で行っているオーバーホールの作業内容などを紹介する~古き良き緻密な世界~。
第4回となる今回は、第一回にてご紹介した、当店が実際に行っているオーバーホール作業(以下OH)についてさらに深堀りをしていきます。
今回のお話は「片振り修正」についてです。
当店ではOHを行った際に必ず、OH証明書を発行しており、行った作業を項目ごとに記録をしています。
そこで必ずと言っていいほど記入している項目が「片振り修正」です。
「片振り修正」とは別名「ビートエラー」とも呼ばれており、時計の精度に大きく影響する項目です。
「片振り修正」は時計の精度を司るパーツ「アンクル」の取り付け位置が中心からずれることが原因で起こる現象で、放っておくと時計の精度がブレたり、不動の原因にもなります。
ヴィンテージウォッチは長年使用していると、必須と言っていいほど「片振り修正」が必要となってきます。
しかし、精度に関するうえで重要な工程ですが、修正技術が非常に難しく、技術力がなければ完璧に修正するのは不可能と言われています。
では、実際にどのような作業を行っているのかを説明して参ります。
片振り修正の主な工程は大きくわけて、
1、ヒゲゼンマイの修正
2、片振り調整
の2工程に分けられます。
1、ヒゲゼンマイの修正
【修正前のゼンマイ。渦の形が崩れています】
【修正後のゼンマイ。綺麗な渦に修正するのは至難の業です。】
ヒゲゼンマイとは機械式時計の心臓部である「テンプ」を構成するパーツの1つ。
奇麗な渦巻きを描いているのが理想の形ですが、時計を使用していると様々な原因で渦の形が崩れてしまいます。
形が崩れてしまうと、正確な精度がだせなくなるので、形状修正を行います。
髪の毛ほどの細さのゼンマイを整えるのは至難の技。
渦巻きの形はもちろんのこと、渦の間隔が均等で横から見たときに水平であることと、非常に繊細な作業です。
写真は当店の技師が実際に修正したもの。
綺麗に修正ができると写真のように美しい渦を巻いているのが分かります。
2、片振り調整
1で修正したヒゲゼンマイをテンプに載せたら、次はテンプとアンクルの位置が中心に合うように微調整を行います。
アンクル
【丸で囲った部分に振り石が中心位置に来るように調整をします】
テンプの振り石とアンクルの中心が合うように調整します。
その調整方法は、テンプのヒゲ玉に専用の自作工具を差し込み、ヒゲ玉を左右に回して調整します。
【赤く囲っているのがヒゲ玉】
許される誤差はミリ単位の世界。
回転が、数ミリずれるだけで片振りが大きく変わり、さらに工具が謝ってヒゲゼンマイに少しでも触れてしまうと、渦巻きが崩れてしまう、とても繊細な世界…
この調整感覚は長年の経験でしか得ることのできない、まさに熟練の技と言えます。
ヴィンテージ時計といえど、日差1分以内という高い精度を実現する事、当店では単純に時計が稼働する…ではなく、正確に時を刻む…を大切に作業を行っています。
高い精度=適切なメンテナンス
OHの中身はお客様にはわからない…だからこそ時計の精度の高さで適切なOHを実感して頂ければと考えています。
すべてはお客様に安心してヴィンテージウォッチをお使いいただく為に...
当店にて時計をご購入する際に、気になることやご質問などございましたら、出来る限りのご対応、回答させて頂きますので、いつでもお問合せくださいませ。
それでは、今後とも【RESUME】をよろしくお願い申し上げます。