About RESUME ~古き良き緻密な世界~

About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #12

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。 当店で行っているオーバーホールの作業内容などを紹介する「~古き良き緻密な世界~」。第12回となる今回は「プラスチック風防とガラス風防の特徴」 についてお話ししたいと思います。  ヴィンテージウォッチを見ていると、似たようなケースサイズや文字盤でも、なぜか印象が違って見える個体があります。その差を作っている要素のひとつが、文字盤の上に載る「風防」です。  風防は、ホコリや衝撃から文字盤を守るための部品であると同時に、光の入り方や反射の出方を変え、時計の“顔つき”を決める存在でもあります。 今回は、ヴィンテージでよく見られる プラスチック風防 と ガラス風防 について、それぞれの特徴と、実際の見え方の違いを写真と一緒に整理します。  ※見え方は素材に加えて、風防の形状や厚みによっても変化します。本記事では「素材由来の傾向」としてご紹介します。   1、プラスチック風防の特徴  プラスチック風防(主にアクリル系)は、ヴィンテージらしい表情を支えてきた定番の素材です。 いちばんの魅力は、光が当たったときの印象がどこかやわらかく、文字盤が“しっとり”見えやすいことにあります。反射は鋭い線というより、面でふわっと広がり、角度によって陰影が増えたり、トーンがゆるやかに変わったりします。 古い時計の温度感と相性が良い、と感じる方が多いのはこのためです。  また、プラスチックは加工がしやすく、ドーム形状など立体的な風防が作られやすい傾向があります。斜めから見たときに外周へ向かってわずかに表情が揺らぎ、奥行きが出る個体も多く、そこにヴィンテージ特有の余韻が宿ります。  一方で、プラスチック風防は小傷が入りやすい素材でもあります。 日常で袖口や机に触れるだけでも細かな擦れが増えていくことがありますが、ここは“弱点”というより“付き合いやすさ”でもあります。細かい傷であれば、市販のプラスチック用研磨剤で表面を整えることが可能であり、雰囲気を損なわずにクリアさを戻せることがあるからです。 もちろん深い傷や欠けがある場合は交換が必要になることもありますが、「育ちながら整えていける」という感覚は、プラスチック風防ならではの魅力だと思います。   2、ガラス風防の特徴 ガラス風防は、プラスチックに比べて硬度が高く、日常の擦れ傷が入りにくい傾向があります。 そのため、普段使いのなかで“傷を増やしたくない”というストレスが減り、道具として安心感のある素材です。  見え方としては、透明感が強く、文字盤の輪郭がすっと立ちやすいのが特徴です。インデックスのエッジやプリントの線が明瞭に見え、全体の印象が端正にまとまりやすくなります。写真でも、ガラス風防の個体は“像が崩れにくい”と感じることが多いはずです。  ただしガラスは、傷に強い反面、衝撃が入った際には欠けやヒビが出てしまい、磨きで戻すというより交換対応になるケースが多くなります。また角度によっては反射がシャープに出やすく、ハイライトが強く乗る個体もあります。 これは好みの分かれるところですが、反射が“線”として現れやすい分、クリアで硬質な印象につながりやすい、と捉えると分かりやすいかもしれません。   3、実際の見え方の違い  ここからは写真を見ながら、素材によってどう表情が変わるのかを比べてみます。今回は、ガラス風防を採用したセイコーと、プラスチック風防を採用したオメガを例に、正面・斜め・低い角度からの違いを整理します。...

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。 当店で行っているオーバーホールの作業内容などを紹介する「~古き良き緻密な世界~」。第12回となる今回は「プラスチック風防とガラス風防の特徴」 についてお話ししたいと思います。  ヴィンテージウォッチを見ていると、似たようなケースサイズや文字盤でも、なぜか印象が違って見える個体があります。その差を作っている要素のひとつが、文字盤の上に載る「風防」です。  風防は、ホコリや衝撃から文字盤を守るための部品であると同時に、光の入り方や反射の出方を変え、時計の“顔つき”を決める存在でもあります。 今回は、ヴィンテージでよく見られる プラスチック風防 と ガラス風防 について、それぞれの特徴と、実際の見え方の違いを写真と一緒に整理します。  ※見え方は素材に加えて、風防の形状や厚みによっても変化します。本記事では「素材由来の傾向」としてご紹介します。   1、プラスチック風防の特徴  プラスチック風防(主にアクリル系)は、ヴィンテージらしい表情を支えてきた定番の素材です。 いちばんの魅力は、光が当たったときの印象がどこかやわらかく、文字盤が“しっとり”見えやすいことにあります。反射は鋭い線というより、面でふわっと広がり、角度によって陰影が増えたり、トーンがゆるやかに変わったりします。 古い時計の温度感と相性が良い、と感じる方が多いのはこのためです。  また、プラスチックは加工がしやすく、ドーム形状など立体的な風防が作られやすい傾向があります。斜めから見たときに外周へ向かってわずかに表情が揺らぎ、奥行きが出る個体も多く、そこにヴィンテージ特有の余韻が宿ります。  一方で、プラスチック風防は小傷が入りやすい素材でもあります。 日常で袖口や机に触れるだけでも細かな擦れが増えていくことがありますが、ここは“弱点”というより“付き合いやすさ”でもあります。細かい傷であれば、市販のプラスチック用研磨剤で表面を整えることが可能であり、雰囲気を損なわずにクリアさを戻せることがあるからです。 もちろん深い傷や欠けがある場合は交換が必要になることもありますが、「育ちながら整えていける」という感覚は、プラスチック風防ならではの魅力だと思います。   2、ガラス風防の特徴 ガラス風防は、プラスチックに比べて硬度が高く、日常の擦れ傷が入りにくい傾向があります。 そのため、普段使いのなかで“傷を増やしたくない”というストレスが減り、道具として安心感のある素材です。  見え方としては、透明感が強く、文字盤の輪郭がすっと立ちやすいのが特徴です。インデックスのエッジやプリントの線が明瞭に見え、全体の印象が端正にまとまりやすくなります。写真でも、ガラス風防の個体は“像が崩れにくい”と感じることが多いはずです。  ただしガラスは、傷に強い反面、衝撃が入った際には欠けやヒビが出てしまい、磨きで戻すというより交換対応になるケースが多くなります。また角度によっては反射がシャープに出やすく、ハイライトが強く乗る個体もあります。 これは好みの分かれるところですが、反射が“線”として現れやすい分、クリアで硬質な印象につながりやすい、と捉えると分かりやすいかもしれません。   3、実際の見え方の違い  ここからは写真を見ながら、素材によってどう表情が変わるのかを比べてみます。今回は、ガラス風防を採用したセイコーと、プラスチック風防を採用したオメガを例に、正面・斜め・低い角度からの違いを整理します。...

About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #11

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。 当店で行っているオーバーホールの作業内容などを紹介する「~古き良き緻密な世界~」。第11回となる今回は、先日お客様にご購入いただいた 「60年代 / OMEGA / Seamaster」 に実施したオーバーホール内容の一部をご紹介します。   ■今回行ったオーバーホール内容 今回のシーマスターに行った作業は、以下の通りです。 分解掃除 ヒゲ修正 片振り調整 角穴車交換 風防研磨 裏蓋パッキン交換 今回はこの中でも、4.角穴車交換 の修理内容にフォーカスしてご紹介します。   ■角穴車とは? ピンセットでつまんでいる大きな歯車が"角穴車"です。 角穴車(かくあなぐるま)は、機械式時計でゼンマイを巻き上げるための歯車です。中心の四角い穴が香箱真(ゼンマイの軸)に噛み合い、リューズを回す力を香箱へ伝えてゼンマイを巻き上げます。 巻き上げ機構は、時計の使い心地を左右する重要な部分です。日常的に触れる操作だからこそ、わずかなガタつきや摩耗があるだけでも、巻き上げ感のムラや違和感として現れることがあります。   ■今回の個体で確認できた状態 歯車の先端がえぐれるような形で摩耗しています。   今回のシーマスターでは、巻き上げ機構を点検したところ、角穴車まわりに本来より大きな遊び(ガタ)が出ており、関連するパーツの先端部に偏った摩耗が見られました。 さらに詳しく確認すると、角穴車上部のプロペラ状のパーツ(巻き上げ機構の一部)を固定するネジまわりに、保持が安定していない痕跡が確認できました。この状態だと巻き上げ時に力が一点へ偏りやすく、先端が“えぐれるように”摩耗してしまうことがあります。...

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。 当店で行っているオーバーホールの作業内容などを紹介する「~古き良き緻密な世界~」。第11回となる今回は、先日お客様にご購入いただいた 「60年代 / OMEGA / Seamaster」 に実施したオーバーホール内容の一部をご紹介します。   ■今回行ったオーバーホール内容 今回のシーマスターに行った作業は、以下の通りです。 分解掃除 ヒゲ修正 片振り調整 角穴車交換 風防研磨 裏蓋パッキン交換 今回はこの中でも、4.角穴車交換 の修理内容にフォーカスしてご紹介します。   ■角穴車とは? ピンセットでつまんでいる大きな歯車が"角穴車"です。 角穴車(かくあなぐるま)は、機械式時計でゼンマイを巻き上げるための歯車です。中心の四角い穴が香箱真(ゼンマイの軸)に噛み合い、リューズを回す力を香箱へ伝えてゼンマイを巻き上げます。 巻き上げ機構は、時計の使い心地を左右する重要な部分です。日常的に触れる操作だからこそ、わずかなガタつきや摩耗があるだけでも、巻き上げ感のムラや違和感として現れることがあります。   ■今回の個体で確認できた状態 歯車の先端がえぐれるような形で摩耗しています。   今回のシーマスターでは、巻き上げ機構を点検したところ、角穴車まわりに本来より大きな遊び(ガタ)が出ており、関連するパーツの先端部に偏った摩耗が見られました。 さらに詳しく確認すると、角穴車上部のプロペラ状のパーツ(巻き上げ機構の一部)を固定するネジまわりに、保持が安定していない痕跡が確認できました。この状態だと巻き上げ時に力が一点へ偏りやすく、先端が“えぐれるように”摩耗してしまうことがあります。...

About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #10

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う「RESUME」です。 近年、ヴィンテージ市場でも再び注目を集める「金時計」。 古くから高級時計の代名詞とされてきた金無垢モデルは、華やかでありながらも、エイジングによって落ち着いた風合いへと変化する金素材は、単なる高級感だけではなく、時間を重ねるごとに深まる味わいを楽しめるのが魅力の1つと言えます。また、単なる装飾素材としての価値にとどまらず、耐食性や加工性といった実用面でも優れた性質を備えています。 そのため、欧州の名門ブランドはもちろん、1960~70年代の国産メーカーも競うように「金」を用いた時計を展開し、多くの人々を魅了し続けてきました。 しかし、一口に「金時計」といっても実はその種類が複数あることはご存じでしょうか?実際に当店でも多くのお客様からその違いについてご質問をいただくことが多々ございます。 そこで、今回の【古き良き緻密な世界】第10回目となる今回は「金時計」に使用される素材の違いや、そのメリット・デメリットについてお話していきます。   〇「金」の種類 ヴィンテージウォッチに使用される金は主に3つに分類されます。 ・金メッキ ・金張り ・金無垢 この3種類です。 どれも「金の輝き」を楽しめますが、それぞれに特徴や違いがあります。 素材の表示については、裏蓋や、裏蓋の内側に刻印されていることが多いので、刻印を見ることで、金の種類を判別することができます。 ※年代やメーカーによって金を表す言葉は異なる場合がございます。予め、ご了承くださいませ。   □金メッキ(GP:Gold Plate / EGP:Electro Gold Plated / SGP:Special Gold Platedなど) ケースの表面にごく薄い金をコーティングした仕様です。電気的なメッキ加工により、見た目は金無垢に近い華やかさを持たせることができます。 ・メリット 軽量でお手頃な価格で購入することができ、お気軽に金の雰囲気を楽しむことができます。...

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う「RESUME」です。 近年、ヴィンテージ市場でも再び注目を集める「金時計」。 古くから高級時計の代名詞とされてきた金無垢モデルは、華やかでありながらも、エイジングによって落ち着いた風合いへと変化する金素材は、単なる高級感だけではなく、時間を重ねるごとに深まる味わいを楽しめるのが魅力の1つと言えます。また、単なる装飾素材としての価値にとどまらず、耐食性や加工性といった実用面でも優れた性質を備えています。 そのため、欧州の名門ブランドはもちろん、1960~70年代の国産メーカーも競うように「金」を用いた時計を展開し、多くの人々を魅了し続けてきました。 しかし、一口に「金時計」といっても実はその種類が複数あることはご存じでしょうか?実際に当店でも多くのお客様からその違いについてご質問をいただくことが多々ございます。 そこで、今回の【古き良き緻密な世界】第10回目となる今回は「金時計」に使用される素材の違いや、そのメリット・デメリットについてお話していきます。   〇「金」の種類 ヴィンテージウォッチに使用される金は主に3つに分類されます。 ・金メッキ ・金張り ・金無垢 この3種類です。 どれも「金の輝き」を楽しめますが、それぞれに特徴や違いがあります。 素材の表示については、裏蓋や、裏蓋の内側に刻印されていることが多いので、刻印を見ることで、金の種類を判別することができます。 ※年代やメーカーによって金を表す言葉は異なる場合がございます。予め、ご了承くださいませ。   □金メッキ(GP:Gold Plate / EGP:Electro Gold Plated / SGP:Special Gold Platedなど) ケースの表面にごく薄い金をコーティングした仕様です。電気的なメッキ加工により、見た目は金無垢に近い華やかさを持たせることができます。 ・メリット 軽量でお手頃な価格で購入することができ、お気軽に金の雰囲気を楽しむことができます。...

About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #9

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。 奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。   「クォーツ時計って、機械式と違ってオーバーホールしなくてもいいんですよね?」 「10年前に電池が切れて止まっているんだけど、電池交換すれば動くよね?」   最近、ヴィンテージウォッチをご案内していると、お客様からこういったご質問を多くいただくようになりました。  確かに、電池で動くクォーツ時計は一般的に「メンテナンスフリー」のイメージが強いかもしれません。 針が止まっても、電池を交換すればまた動く——そんな印象をお持ちの方も多いでしょう。  しかし実際には、クォーツも機械式同様に定期的なメンテナンスが欠かせません。 たくさんの思い出が詰まった大切なクォーツ時計を、これからも長く愛用したいとお考えの方には、ぜひ知っていただきたいポイントがあります。  そこで今回の「古き良き緻密な世界」第9回では、機械式ではなくクォーツ時計にフォーカスし、「クォーツ時計のオーバーホール」について、その必要性やタイミングをお話ししたいと思います。     1. クォーツにも“動く部品”がある  「クォーツ」と聞くと、電池で動く“電子機器”のようなイメージを持たれるかもしれません。 けれど実際には、クォーツ時計の多くには、機械式と同様に歯車や軸受けなど、オイルで潤滑された可動部品が存在しています。  特に1970〜80年代に製造されたクォーツモデルは、内部構造が複雑で、ある意味“機械式と電子式のハイブリッド”とも言える設計になっています。  そのため、内部のオイルは経年によって劣化し、汚れや摩耗が進めば、部品の破損や回路へのダメージにつながる恐れもあります。 また、汚れが蓄積されることで、電子回路に過剰な電流が流れ、電池の持ちが通常よりも短くなることもあるのです。   以下のような症状がある場合、オーバーホールを検討するタイミングかもしれません  • 電池を入れても動かない  • 秒針の動きがカクカクする/引っかかるように動く  • 以前よりも電池の持ちが短い  •...

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。 奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。   「クォーツ時計って、機械式と違ってオーバーホールしなくてもいいんですよね?」 「10年前に電池が切れて止まっているんだけど、電池交換すれば動くよね?」   最近、ヴィンテージウォッチをご案内していると、お客様からこういったご質問を多くいただくようになりました。  確かに、電池で動くクォーツ時計は一般的に「メンテナンスフリー」のイメージが強いかもしれません。 針が止まっても、電池を交換すればまた動く——そんな印象をお持ちの方も多いでしょう。  しかし実際には、クォーツも機械式同様に定期的なメンテナンスが欠かせません。 たくさんの思い出が詰まった大切なクォーツ時計を、これからも長く愛用したいとお考えの方には、ぜひ知っていただきたいポイントがあります。  そこで今回の「古き良き緻密な世界」第9回では、機械式ではなくクォーツ時計にフォーカスし、「クォーツ時計のオーバーホール」について、その必要性やタイミングをお話ししたいと思います。     1. クォーツにも“動く部品”がある  「クォーツ」と聞くと、電池で動く“電子機器”のようなイメージを持たれるかもしれません。 けれど実際には、クォーツ時計の多くには、機械式と同様に歯車や軸受けなど、オイルで潤滑された可動部品が存在しています。  特に1970〜80年代に製造されたクォーツモデルは、内部構造が複雑で、ある意味“機械式と電子式のハイブリッド”とも言える設計になっています。  そのため、内部のオイルは経年によって劣化し、汚れや摩耗が進めば、部品の破損や回路へのダメージにつながる恐れもあります。 また、汚れが蓄積されることで、電子回路に過剰な電流が流れ、電池の持ちが通常よりも短くなることもあるのです。   以下のような症状がある場合、オーバーホールを検討するタイミングかもしれません  • 電池を入れても動かない  • 秒針の動きがカクカクする/引っかかるように動く  • 以前よりも電池の持ちが短い  •...

About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #8

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。  最近、お客様とお話する中で「ゼンマイで動くってどんな仕組みなの?」「本当にゼンマイで時計は動くの?」というご質問をいただくことが増えてきました。 確かに、電池で動くクォーツとは違い、ゼンマイを動力とする機械式腕時計は、少し不思議に思える方も多いと思います。 そこで、その疑問について解明すべく ~古き良き緻密な世界~ 第8回目となる今回は、時計の構造にまつわるお話を交えながら、時計の「心臓部」とも言える「ゼンマイ」についてご紹介します。   1.ゼンマイとは 【新品のゼンマイは専用のパッケージに包装されています】   ゼンマイ(主ゼンマイ/Mainspring)は、機械式腕時計の動力源となるバネのこと。 ゼンマイを巻くことでエネルギーを蓄え、そのほどける力を利用して、時計内部の歯車を動かし、針を進めていきます。 通常、ゼンマイはS字型に折りたたまれたような形で収納されていますが、実はまっすぐに伸ばすと約300mm(30cm)にもなる長さ(※レディースやモデルによっては、長さは異なります)。 それが「香箱(バレル)」という小さなケースの中に、ギュッと圧縮されて収められているのです。 【外周のギザギザした筒状のパーツが香箱。この中にゼンマイは収納されています】   ゼンマイを完全に巻き上げた状態では、素材や構造にもよりますが、約30~48時間ほど、時計が動き続けます。 さらに近年では技術の進化により、168時間(約1週間)も動き続ける高性能モデルも登場しています。   2. ゼンマイの素材の歴史 では次に、ゼンマイに使われてきた素材の変遷を見ていきましょう。 ゼンマイの素材は、時計の歴史とともに進化してきました。 懐中時計の時代である19世紀ころには、加工しやすい炭素鋼が主に使われていました。ただし、錆びやすいという欠点もありました。 そこで、20世紀初頭に入ると炭素鋼に焼き入れを施し、耐久性を高めたブルースチールが登場します。 ブルースチールと聞くと文字盤の針にも用いられる技術ですが、ゼンマイにも使われていたのです。 もちろん、針と同様、美しい青みが特徴です。 そして時代は進み、50年代には新たに「ニヴァフレックス」というステンレス合金が登場。二ヴァフレックスは非磁性・高耐久・温度変化や経年劣化に強く、現代においてもゼンマイの素材として業界標準と言われています。  さらに最新技術に至っては、主ゼンマイではありませんが、時計の精度に関わるヒゲゼンマイには、さらに進化したシリコン素材が使われることも。 これは耐磁性に非常に優れ、磁場の多い現代社会にマッチした革新的な素材です。...

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いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。  最近、お客様とお話する中で「ゼンマイで動くってどんな仕組みなの?」「本当にゼンマイで時計は動くの?」というご質問をいただくことが増えてきました。 確かに、電池で動くクォーツとは違い、ゼンマイを動力とする機械式腕時計は、少し不思議に思える方も多いと思います。 そこで、その疑問について解明すべく ~古き良き緻密な世界~ 第8回目となる今回は、時計の構造にまつわるお話を交えながら、時計の「心臓部」とも言える「ゼンマイ」についてご紹介します。   1.ゼンマイとは 【新品のゼンマイは専用のパッケージに包装されています】   ゼンマイ(主ゼンマイ/Mainspring)は、機械式腕時計の動力源となるバネのこと。 ゼンマイを巻くことでエネルギーを蓄え、そのほどける力を利用して、時計内部の歯車を動かし、針を進めていきます。 通常、ゼンマイはS字型に折りたたまれたような形で収納されていますが、実はまっすぐに伸ばすと約300mm(30cm)にもなる長さ(※レディースやモデルによっては、長さは異なります)。 それが「香箱(バレル)」という小さなケースの中に、ギュッと圧縮されて収められているのです。 【外周のギザギザした筒状のパーツが香箱。この中にゼンマイは収納されています】   ゼンマイを完全に巻き上げた状態では、素材や構造にもよりますが、約30~48時間ほど、時計が動き続けます。 さらに近年では技術の進化により、168時間(約1週間)も動き続ける高性能モデルも登場しています。   2. ゼンマイの素材の歴史 では次に、ゼンマイに使われてきた素材の変遷を見ていきましょう。 ゼンマイの素材は、時計の歴史とともに進化してきました。 懐中時計の時代である19世紀ころには、加工しやすい炭素鋼が主に使われていました。ただし、錆びやすいという欠点もありました。 そこで、20世紀初頭に入ると炭素鋼に焼き入れを施し、耐久性を高めたブルースチールが登場します。 ブルースチールと聞くと文字盤の針にも用いられる技術ですが、ゼンマイにも使われていたのです。 もちろん、針と同様、美しい青みが特徴です。 そして時代は進み、50年代には新たに「ニヴァフレックス」というステンレス合金が登場。二ヴァフレックスは非磁性・高耐久・温度変化や経年劣化に強く、現代においてもゼンマイの素材として業界標準と言われています。  さらに最新技術に至っては、主ゼンマイではありませんが、時計の精度に関わるヒゲゼンマイには、さらに進化したシリコン素材が使われることも。 これは耐磁性に非常に優れ、磁場の多い現代社会にマッチした革新的な素材です。...

About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #7

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About RESUME~古き良き緻密な世界~ #7  いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。 奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。   当店で行う作業内容や、時計にまつわるお話などを紹介する ~古き良き緻密な世界~ 第7回目となる今回は、50年代オールドセイコーのオーバーホールであった出来事についてお話させていただきます。 まずはじめに、1950年代の時計と聞くとお客様から「この時計は動くの?」といったご質問をいただくことがございます。 確かに今から70年前の時計と聞くと不安に思われるのはよくわかります。 しかし、私はこの質問に対して自信をもって「ご安心ください。ご使用に問題ございません」とお答えしています。 ヴィンテージウォッチは定期的なオーバーホールと、適切なメンテナンスを行うことで現行時計と遜色のない精度で長いあいだ、お使いいただけるポテンシャルを秘めているのです。 しかし、ヴィンテージウォッチの多くは高い完成度を誇る代わりに現行時計よりも複雑な構造を持つ時計が多いのも事実。 その為、必要な知識・技術・経験を持たない技師がオーバーホールを行うことで、表面上、動いているだけで時計が持つ本来のポテンシャルを発揮できていない杜撰な修理が行われるケースも多く見られます。 今回はそのような修理についてでございます。   先日、お客様から当店にお持ち込みいただいた、オールドセイコーのオーバーホールをした際に「ヒゲ玉」と呼ばれるパーツが破損しているのを発見しました。 ヒゲ玉とは、時計の心臓部「テンプ」に、時計の精度を出すうえで重要な「ヒゲゼンマイ」を固定するための重要なパーツです。 時計の動きを調整するのにヒゲ玉に刻まれた溝に工具を差し込み、右、左と回転させて時計の動きを安定させています。 作業は非常に繊細であり、専用の工具もないため、時計職人による自作の工具が必要です。 工具が作れず、適当にある道具で作業を進めると、ヒゲ玉はすぐに破損もしくは、不具合が発生してしまうケースが多いです。   【〇で囲った箇所がクラック】   写真をご覧になると、該当箇所に不適切な工具で無理に調整したことが原因でヒゲ玉が割れているのが分かります。 こうなると、パーツ修理は不可能なので、当店であればパーツを取り寄せて、新しく交換します。 しかし、前回この時計をオーバーホールした技師は、接着剤でクラックを固定し、無理やりパーツを修理していました。 これでは、稼働こそすれど、時計が持つ本来のポテンシャルを発揮するのは不可能です。  ...

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About RESUME~古き良き緻密な世界~ #7  いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。 奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。   当店で行う作業内容や、時計にまつわるお話などを紹介する ~古き良き緻密な世界~ 第7回目となる今回は、50年代オールドセイコーのオーバーホールであった出来事についてお話させていただきます。 まずはじめに、1950年代の時計と聞くとお客様から「この時計は動くの?」といったご質問をいただくことがございます。 確かに今から70年前の時計と聞くと不安に思われるのはよくわかります。 しかし、私はこの質問に対して自信をもって「ご安心ください。ご使用に問題ございません」とお答えしています。 ヴィンテージウォッチは定期的なオーバーホールと、適切なメンテナンスを行うことで現行時計と遜色のない精度で長いあいだ、お使いいただけるポテンシャルを秘めているのです。 しかし、ヴィンテージウォッチの多くは高い完成度を誇る代わりに現行時計よりも複雑な構造を持つ時計が多いのも事実。 その為、必要な知識・技術・経験を持たない技師がオーバーホールを行うことで、表面上、動いているだけで時計が持つ本来のポテンシャルを発揮できていない杜撰な修理が行われるケースも多く見られます。 今回はそのような修理についてでございます。   先日、お客様から当店にお持ち込みいただいた、オールドセイコーのオーバーホールをした際に「ヒゲ玉」と呼ばれるパーツが破損しているのを発見しました。 ヒゲ玉とは、時計の心臓部「テンプ」に、時計の精度を出すうえで重要な「ヒゲゼンマイ」を固定するための重要なパーツです。 時計の動きを調整するのにヒゲ玉に刻まれた溝に工具を差し込み、右、左と回転させて時計の動きを安定させています。 作業は非常に繊細であり、専用の工具もないため、時計職人による自作の工具が必要です。 工具が作れず、適当にある道具で作業を進めると、ヒゲ玉はすぐに破損もしくは、不具合が発生してしまうケースが多いです。   【〇で囲った箇所がクラック】   写真をご覧になると、該当箇所に不適切な工具で無理に調整したことが原因でヒゲ玉が割れているのが分かります。 こうなると、パーツ修理は不可能なので、当店であればパーツを取り寄せて、新しく交換します。 しかし、前回この時計をオーバーホールした技師は、接着剤でクラックを固定し、無理やりパーツを修理していました。 これでは、稼働こそすれど、時計が持つ本来のポテンシャルを発揮するのは不可能です。  ...