About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #15

About RESUME ~古き良き緻密な世界~ #15

いつも当サイトをご覧いただき、ありがとうございます。
奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。

当店で行っているオーバーホールの作業内容などを紹介する「~古き良き緻密な世界~」。

今回は、お客様にご購入いただきました「セイコー、ロードマチック」の納品前メンテナンスについてご紹介いたします。

ヴィンテージウォッチは、外観や動作を確認しただけでは、内部の状態まで正確に把握することができません。

一見すると問題なく動いている時計でも、分解して初めて、部品の摩耗や変形、軸受け部分の緩みなどが見つかることがあります。

今回のロードマチックも、ムーブメントを細部まで点検した結果、通常の分解掃除に加え、複数箇所の調整と部品の組み込みが必要となりました。

1、ムーブメントの分解・洗浄

まずはムーブメントをすべて分解し、歯車や受け、ネジなどの部品を一つずつ洗浄します。

古くなった油や汚れが残った状態では、部品同士の摩擦が増え、時計の動作や精度に影響を及ぼすことがあります。

分解後は、それぞれの部品を専用の洗浄かごに分けて洗浄。汚れを落としたうえで部品の状態を確認し、必要な箇所へ適切に注油しながら組み上げていきます。


       【分解したムーブメントの部品を洗浄かごに分けた状態】

今回のメンテナンスでは、分解掃除に加えて、ヒゲゼンマイの形状修正と片振り調整も行いました。

ヒゲゼンマイは、時計の精度を左右する非常に繊細な部品です。形状に乱れがあるとテンプの往復運動が安定せず、精度や姿勢差に影響する可能性があります。

そのため、ヒゲゼンマイの状態を整えたうえで、テンプが左右にできるだけ均等に振れるよう、片振りを調整しました。


2、1番車の下側の穴締め

点検の結果、1番車の軸を支える下側の穴に緩みが確認されたため、「穴締め」を行いました。

歯車の軸受け部分に緩みがあると、歯車が本来の位置から傾いたり、かみ合わせが不安定になったりする原因となります。

穴締めとは、専用の工具を使用して軸受け部分を適切な大きさへ整え、軸の余分な遊びを抑える作業です。

          【専用工具を使用した1番車下側の穴締め作業】

強く締めすぎると歯車の動きを妨げ、反対に緩みが残れば、動作の安定にはつながりません。

歯車が滑らかに回転するためのわずかな余裕を残しながら、適切な状態に整える必要があります。

3、3番車の受け石と受け石バネの組み込み

続いて、3番車の軸を支える受け部分へ、新たに受け石を組み込みました。

受け石は、歯車の軸を支えながら摩擦を抑える役割を持つ部品です。非常に小さな部品ですが、歯車を安定して回転させるためには欠かすことができません。

            【3番車の受け石を組み込んだ状態】

さらに、組み込んだ受け石を所定の位置で保持するため、受け石バネも取り付けています。


【3番車の受け石バネを組み込んだ状態】

受け石とバネを正しく組み込むことで、3番車の軸を安定して支え、輪列が滑らかに動作する状態へ整えました。

写真で見ると小さな違いですが、こうした細かな作業の積み重ねが、ムーブメント全体の安定した動作につながります。

4、曲がった巻き芯の修正

今回の個体では、リューズとムーブメントをつなぐ「巻き芯」に曲がりが確認されました。

巻き芯は、リューズの操作をムーブメントへ伝えるための部品です。曲がったまま使用すると、リューズの回転や引き出し操作に違和感が生じるだけでなく、周辺部品へ余分な負荷がかかる可能性があります。

今回は巻き芯を旋盤に取り付け、回転させながら曲がっている位置と方向を確認。
状態を見極めながら、少しずつ形状を修正しました。




          【巻き芯を回転させて曲がりを確認する様子】



【巻き芯の曲がりを修正する様子】

巻き芯は細く、無理に力を加えると破損するおそれがあるため、慎重な作業が求められます。修正後はリューズの回転や引き出し操作を確認し、正常に操作できる状態へ整えています。

5、ムーブメントを支える部品と外装の整備

内部の整備とあわせて、ムーブメントをケース内で保持する機械固定枠も交換しました。

機械固定枠が劣化または変形していると、ケースの中でムーブメントを安定して固定できず、外部からの衝撃やリューズ操作の際に余分な負荷がかかることがあります。

目立たない部品ではありますが、ムーブメントを正しい位置で支えるために重要な役割を担っています。

そのほか、以下の外装整備も行いました。

・パッキン交換
・バネ棒交換
・バンド調整
・ケースの錆び取り、洗浄

ケースに付着していた錆や汚れを取り除き、時計本来の状態をできる限り損なわないよう、丁寧に洗浄しています。

また、パッキンやバネ棒といった消耗部品も交換し、時計を日常的に着用するうえで不安が残らないよう整えました。

なお、パッキンを交換した場合でも、ヴィンテージウォッチの防水性能を保証するものではありません。ご使用の際は、水や汗に十分ご注意ください。


まとめ

今回のロードマチックでは、通常の分解掃除だけでなく、ヒゲゼンマイの修正や片振り調整、軸受け部分の穴締め、3番車の受け石とバネの組み込み、巻き芯の修正、機械固定枠の交換などを行いました。

時計を動かすだけであれば、表面化している不具合のみを修正することもできます。

しかし、これからも安心して使い続けられる状態へ整えるためには、ムーブメント全体を確認し、小さな緩みや変形を一つずつ解消していくことが大切です。

ヴィンテージウォッチには、長い年月を重ねてきたからこその魅力があります。その一方で、現在の状態は一つひとつ異なり、それぞれの時計に合わせた整備が欠かせません。

RESUMEでは、ご購入いただいた時計を分解して内部の状態を確認し、必要な修理や調整を行ったうえでお渡ししています。

販売することだけで終わらず、その時計を末永く楽しんでいただける状態へ整えることも、ヴィンテージウォッチを扱う専門店として大切な役割だと考えています。

すべては、お客様に安心してヴィンテージウォッチをお使いいただく為に。

当店にて時計をご購入いただく際に、気になることやご質問などございましたら、できる限り丁寧にご対応いたしますので、いつでもお問い合わせくださいませ。

それでは今後とも【RESUME】をよろしくお願い申し上げます。

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