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奈良でヴィンテージウォッチを扱う【RESUME】です。
当店で行っているオーバーホールの作業内容などを紹介する「~古き良き緻密な世界~」。
今回は、お客様にご購入いただきました「セイコー、ロードマチック」の納品前メンテナンスについてご紹介いたします。
今回の時計に搭載されているのは、自動巻きムーブメントの「Cal.5606」。
ロードマチックを代表するムーブメントの一つで、時刻表示に加えて曜日・日付表示を備え、手巻き機能や秒針停止機能も搭載しています。
修理前の時計は動作していましたが、ヴィンテージウォッチは外観や動作を確認しただけでは、内部の状態まで正確に判断することができません。
そのため、ムーブメントをすべて分解して各部品を点検したところ、通常の分解掃除に加え、ゼンマイや「オシドリ」など、複数の部品交換と調整が必要であることが分かりました。
1、ムーブメントの分解・洗浄
まずは、ムーブメントを構成する歯車や受け、ネジ、カレンダー機構などを一つずつ取り外し、すべての部品を分解します。
古くなった油や汚れが残っていると、部品同士の摩擦が増え、歯車の動きや時計の精度に影響することがあります。
分解した部品は種類ごとに洗浄かごへ分け、専用の機械を使用して洗浄。長年の使用によって付着した油や汚れを取り除きます。
【分解したムーブメントの部品を洗浄かごに分けた状態】
洗浄後は、歯車の歯先や軸、受け石、ネジなどに摩耗や変形がないかを確認します。
一つひとつの部品は非常に小さなものですが、わずかな不具合がムーブメント全体の動作に影響するため、細部まで確認しながら作業を進めていきます。
2、ゼンマイの交換
今回のメンテナンスでは、時計を動かすための動力源となるゼンマイを交換しました。
ゼンマイは、巻き上げられた力を少しずつほどきながら歯車へ伝え、時計を動かす役割を担っています。
長年使用されたゼンマイは、金属疲労によって弾力が弱くなったり、形状が乱れたりすることがあります。十分な力を蓄えられなくなると、持続時間の低下や動作の不安定につながる可能性があります。

【分解したムーブメントと、交換するゼンマイ】
今回は新しいゼンマイへ交換し、安定した力を輪列へ伝えられる状態に整えました。
見た目からは確認できない部品ですが、時計の安定した動作を支える非常に重要な部分です。
3、「オシドリ」の役割と交換
続いて、今回の修理における大きなポイントとなった「オシドリ」の交換です。
「オシドリ」という少し変わった名前の部品ですが、リューズの操作に関わる重要な役割を担っています。
リューズの中心には、「巻真(まきしん)」と呼ばれる細長い軸が取り付けられています。巻真は、リューズを回したり引き出したりした際の動きを、ムーブメント内部へ伝える部品です。
オシドリは巻真の溝にかかり、巻真がムーブメントから簡単に抜けないよう保持しています。また、リューズを押し込んだ状態や引き出した状態など、それぞれの操作位置を安定させるためにも欠かすことができません。
オシドリに摩耗や変形などの不具合が生じると、リューズを引っ張った際に巻き芯が抜けてしまい、リューズ操作ができなくなる可能性があります。
状態によっては巻真を正しく保持できず、リューズ操作に支障をきたすこともあります。
【取り外したオシドリ(左)と、交換するオシドリ(右)】
今回の個体では、点検の結果、オシドリの交換が必要と判断しました。
交換後は巻真を組み込み、リューズの押し引きや、それぞれの位置での操作に問題がないことを確認しています。
普段は目にすることのない小さな部品ですが、使用者によるリューズ操作を確実にムーブメントへ伝えるための、重要な役割を担っています。
4、ヒゲゼンマイの修正と片振り調整
部品の洗浄と交換を終えたあとは、時計の精度に関わる調整を行います。
今回の個体では、ヒゲゼンマイの形状に乱れが見られたため、形状を整える修正を行いました。
ヒゲゼンマイは、テンプの往復運動を制御する非常に繊細な部品です。形状が乱れていると、テンプの動きが不安定になり、精度や姿勢差に影響することがあります。
あわせて、テンプの左右の振れができるだけ均等になるよう、片振り調整も行っています。
ヒゲゼンマイの修正や片振り調整は、見た目の変化こそほとんどありません。
しかし、時計の鼓動を安定させるためには欠かすことのできない作業であり、部品の状態を見ながら慎重に調整する必要があります。
5、ネジと外装部品の交換
ムーブメント内部では、劣化が確認されたネジも交換しました。
時計に使用されているネジは非常に小さな部品ですが、受けや各機構を所定の位置へ固定する役割を持っています。
ネジの頭や溝が傷んでいると、十分に固定できなくなるだけでなく、今後のメンテナンス時に取り外しが困難になる場合があります。
そのため、長く整備を続けていくことも考慮し、状態に不安のあるネジを交換しています。
内部の整備とあわせて、以下の外装整備も行いました。
・パッキン交換
・バネ棒交換
・バンドピン交換
・風防研磨
・ケース洗浄
風防は表面を研磨し、使用に伴って付いた細かな傷を可能な限り取り除きました。
ケースとブレスレットについても洗浄を行い、細かな隙間に入り込んだ汚れを落としています。
また、時計本体とブレスレットをつなぐバネ棒や、ブレスレットを構成するバンドピンも交換し、日常的に着用するうえで不安が残らないよう整えました。
なお、パッキンを交換した場合でも、ヴィンテージウォッチの防水性能を保証するものではありません。ご使用の際は、水や汗に十分ご注意ください。
まとめ
今回のセイコー「ロードマチック」Cal.5606では、通常の分解掃除に加えて、ゼンマイとオシドリ、ネジの交換、ヒゲゼンマイの修正、片振り調整を行いました。
さらに、パッキンやバネ棒、バンドピンを交換し、風防研磨とケース洗浄を行うことで、ムーブメント内部から外装まで総合的に整備しています。
今回ご紹介したオシドリは、決して大きな部品ではありません。
しかし、巻真を保持し、リューズの位置に応じて内部の機構を切り替えるという、時計を操作するうえで欠かせない役割を担っています。
リューズを引いたときに感じる小さな手応えや、時刻合わせ、カレンダー修正といった当たり前の操作も、オシドリをはじめとする複数の部品が正しく連動することで成り立っています。
こうした外側からは見えない部品の状態を確認し、必要に応じて修理や交換を行うことも、ヴィンテージウォッチを安心して使い続けるためには大切な工程です。
RESUMEでは、ご購入いただいた時計を分解して内部の状態を確認し、それぞれの個体に必要な修理や調整を行ったうえでお渡ししています。
販売することだけで終わらず、その時計を末永く楽しんでいただける状態へ整えることも、ヴィンテージウォッチを扱う専門店として大切な役割だと考えています。
すべては、お客様に安心してヴィンテージウォッチをお使いいただく為に。
当店にて時計をご購入いただく際に、気になることやご質問などございましたら、できる限り丁寧にご対応いたしますので、いつでもお問い合わせくださいませ。
それでは今後とも【RESUME】をよろしくお願い申し上げます。